オーストラリアで森林火災が多発する原因とは?

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オーストラリアで森林火災が多発する原因とは?

オーストラリアで森林火災が多発する原因とは

森林火災とは主に山や森林で広範囲にわたり発生する火災を指し、近年では世界各国で件数が増加しています。2019年にはオーストラリアとアマゾンで大きな森林火災が発生し、2020年にはアメリカ・カリフォルニア州を中心に大規模な火災が発生。いずれも長期にわたる火災となり、付近の市民や環境に大きな被害を及ぼしました。森林火災は人間を含む生態系に影響を与えるだけでなく、長期化することで二酸化炭素の大量放出による地球温暖化や大気汚染に繋がる恐れがあります。広大な敷地を誇るオーストラリアには多くの山林があり、枯れ葉や木々が大量にあることから森林火災の大規模化が懸念されています。
このページでは近年オーストラリアで発生した森林火災と、今後の取り組みについて解説します。

オーストラリアで森林火災が起こる原因とは?

オーストラリア国内における森林火災の現状

オーストラリアでは2019年9月以降に相次いで森林火災が発生し、国内外の環境に大きな影響を与える社会問題となりました。過去に例を見ない大規模な火災は長期にわたり、2020年2月に続いた大雨により約半年振りに鎮火。これほど森林火災が長期化するケースは世界でも前例がなく、過去最大規模の災害として市民や環境に大きな影響を及ぼしました。特に壊滅的な被害となったニューサウスウェールズ州では28人の死者が確認され、住宅や土地の焼失、生態系や環境破壊など様々な被害が報告されています。
この火災でオーストラリア国内における1千万ヘクタール以上の土地が焼失し3,000棟以上の建物が被災。生態系にも大きな被害を与え、多くのコアラやカンガルーの死亡も確認されました。オーストラリアでの森林火災は珍しいことではありません。しかし、降雨量の減少や急激な気温の上昇など大規模化する条件が重なっていたため火災が激化し、甚大な被害をもたらす結果となりました。
森林火災は土地を焼き尽くす被害だけでなく多くの二酸化炭素も放出されるため、地球温暖化や気候変動への影響が懸念されています。

原因1. 空気の乾燥と降水量の減少

オーストラリアで森林火災が発生する第一の原因として、極端な降水量の減少が挙げられます。
オーストラリアは国土全体で降水量が少なく、世界6大陸(ユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸)のなかで最も乾燥した地域となります。特に2019年は極端に降水量が少なく例年の半分ほどでした。シドニーでは2018年の終わりから2019年5月にかけて雨が降らない状態が続き、4月・5月の2か月間で1ミリ以上の雨が降った日はわずか5日間。降水量は例年の1/10程度となり、過去20年間で最も少ない年として報告されました。
また、降水量が極端に減少したことに伴う空気の乾燥も森林火災の要因となっています。乾燥により枯れ葉などが擦れることで火種が生まれ、火種が周囲の枯れ葉などに燃え移り火災が発生します。近年は気候変動による温暖化で降水量がさらに減少し、乾燥や干ばつが起こりやすくなっていることも大きな原因として挙げられます。

原因2. 温暖化による気温の上昇

森林火災の原因は乾燥や降水量の減少だけではありません。地球規模の温暖化による極端な気温の上昇も大きな要因として挙げられます。オーストラリアでは2019年の平均気温と最高気温が共に過去最高を観測。2020年1月4日にはシドニーとキャンベラで最高気温が更新され、西シドニーのペンリスでは過去の最高気温47.3度を上回る48.9度が観測されました。気温が上昇する日が続くことで森林での自然発火が起こりやすくなり火災も長期化する傾向にあるため、気温の上昇は大きな懸念となっています。
さらに、インド洋で見られる気候変動もオーストラリアで大規模な火災が発生する一因として挙げられます。夏から秋にかけて熱帯インド洋で発生する「ダイポールモード現象」と呼ばれる気候変動は、近年オーストラリアの気候に大きな影響を与えています。数年に一度の頻度で発生するダイポールモード現象はインド洋の水温に影響を与えるだけでなく、各地域の降水量にも関係することが研究で解明されました。インド洋の西側に位置するオーストラリアは同現象により降水量が極端に減少し、ダムや貯水池の水量不足に繋がることから火災の消火活動にも影響が生じています。

原因3. 油分を多く含む樹木の群生

オーストラリアにおける森林の大半は、ユーカリやティーツリーなどの群生によるものです。ユーカリやティーツリーは油分を多く含む樹木として知られ、自然な精油の原料として重宝されています。油分を多く含むため樹皮が燃えやすく、着火すると瞬く間に火が燃え移る特性の樹木が群生していることもオーストラリアにおける森林火災の要因として挙げられます。
さらに、地面に落ちた葉や表皮も火が起こる一因となります。ユーカリは葉の部分にテルペンと呼ばれる油分を生成し空気中に気体を放出します。気温が上昇するとテルペンの放出量はさらに増えます。油分を含んだ空気があたりに満ち、葉や表皮が地面に大量に落ちることも火災が拡大する要因となっています。
また、ティーツリーは幹の部分が紙のように薄く剥がれやすいため「ペーパーバーク」とも呼ばれます。こうしたオーストラリア固有の樹木の特性も、大規模な火災を引き起こす一因として考えられます。

森林火災が与える影響

森林火災が与える主な影響として以下の項目が挙げられます。

  • 樹木の燃焼によって生じる二酸化炭素の放出
  • 広範囲にわたる土地や居住地の焼失
  • 極端な気温上昇によって起こる二次火災
  • 野生動物の焼死と生態系の変化
  • 大気汚染、煙による被害
  • 地表や空気の乾燥、温暖化
  • レスキュースタッフの身体的被害
  • 消火や救助活動による経済的損失

森林火災は付近の住民や環境に被害を及ぼすだけでなく、地球の温暖化や気候変動にも影響を与えます。
森林に群生する樹木は光合成を行う際に大気中の二酸化炭素を吸収します。大気中の二酸化炭素の量が減少することで空気の浄化と温暖化の緩和に繋がりますが、森林火災が起こると大量の樹木が焼失し二酸化炭素は増加の一途を辿ります。さらに火災の熱波により気温は急激に上昇。乾燥した土壌は瞬く間に火が広がるため、オーストラリアでの消火活動は困難を極めます。また、降水量の少ないオーストラリアでは森林火災が長期化し、鎮火までに数か月を要する場合もあります。森林には生態系のバランスを保つため様々な動物や生物が生息し、その中には稀少な絶滅危惧種も含まれています。専門家は生物が危機にさらされることで生態系のバランスが崩れる恐れがあると警告。防火と自然環境の保全に取り組むよう呼びかけています。
オーストラリアでは2019年7月から2020年3月までに約1千万ヘクタールもの土地が火災により焼失。この期間にオーストラリア全体で3,000棟以上の建物が被災し、33名の死者が確認されました。オーストラリアの固有種であるコアラは約8,000頭が焼死し、国内に生息する30%以上が被害を受けたと当局は報告しています。火災により焼失したエリアには貴重な生態系を有するブルーマウンテン国立公園やゴンドワナ国立公園も含まれ、東部のメルボルンやブリスベンなどの主要都市も火災の影響を受けました。大規模な森林火災の影響を受け、オーストラリアでは防火対策と環境保護に対する意識がさらに高まっています。

森林火災の消火方法

森林火災が発生した際は迅速で効率的な消火活動が求められますが、広大な敷地を誇るオーストラリアでは消火活動もスケールが異なります。
日本ではヘリコプターを使用した空中での消火活動や消防車による消火活動が行われますが、オーストラリアでは消防機と呼ばれる専用の消防飛行艇や陸上消防機が使用されます。森林火災が多く火の規模が広範囲となる地域ではヘリコプターを中心とする消火では間に合わないため、オーストラリアだけでなく北米やアマゾンの森林火災でも消防機が導入されています。消防機は貯水池などの水を大量に運ぶことが可能で、森林火災の現場上空から一気に放水し効率的な消火活動作業を行います。さらに消防機と並行し、延焼が予想される地域の樹木を伐採して防火帯を作るなど大規模な消火活動が行われます。
しかし、消防機などによる消火活動を行っても鎮火には相当の時間を要します。大規模な消火活動には大量の水だけでなく多くの費用も必要となるため、国をあげて防火に取り組む必要があります。

森林火災を防ぐための対策とは

森林火災には自然発火など環境が原因で発生するケースと、たき火やタバコの消し忘れなどによる人為的な原因で起こるケースがあります。近年では各国でキャンプや登山などアウトドアに関する注目が高まり、山や森林へ訪れる人口が増加しています。アウトドア人口の増加に伴い火災も増加傾向にありますが、多くは迅速な消火活動により大規模化することはありません。森林火災を防ぐためには木々が多い場所でのたき火を避け、火の近くに可燃性のものを置かないようにするなど十分な注意が必要です。風が強い日や乾燥した日が続いた際のたき火はできる限り避け、やむを得ず火を使用する場合は常に目を離さず使用後は必ず消火を行いましょう。タバコは指定の場所で喫煙し、吸い殻は必ず消火を確認してから捨ててください。投げ捨てや指定場所以外での喫煙は絶対にやめましょう。
また、自然発火による森林火災についても人間の活動が一因となっている場合があります。地球規模の温暖化は二酸化炭素の排出量が大きく関与しています。長時間使用しないコンセントを抜く、冷暖房などの節電を各国が協力して行うことで発電所の稼働は軽減し、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。さらに、車を運転する際はアイドリングストップを心がけることや公共交通機関を利用することも温暖化対策のひとつです。
日々の暮らしのなかで火の重要性や危険性について理解を深め、森林火災の現状や原因について考えることも重要な取り組みと言えます。

オーストラリアへ渡航する際はETAS(イータス)の申請が必要

観光や短期のビジネスを目的としてオーストラリアへ渡航する方は、電子渡航認証システムETAS(イータス)の申請が必須となります。ETAS(イータス)はオーストラリア政府および移民局が定めた入国制度で、日本、韓国、香港、アメリカ、カナダ、シンガポール、ブルネイ、マレーシアいずれかの国籍を持つ方がオーストラリアへ渡航する際に申請が必須となるものです。ただし、すでにオーストラリア政府より発行された有効なビザを所有している方は、ETAS(イータス)を申請する必要はありません。
ETAS(イータス)を利用してオーストラリアに滞在できる期間は、一度の渡航につき最長3か月となります。3か月以上の滞在を希望する方はETAS(イータス)申請の対象外となり、ビザの取得が必要となります。また、留学や現地での就労を目的として渡航する方もETAS(イータス)申請の対象外となりますので、目的にあわせたビザの取得をご検討ください。
ETAS(イータス)を管轄するオーストラリア政府移民局およびオーストラリア大使館では、渡航が決定した段階でETAS(イータス)の申請を推奨しています。申請後に当局にて審査が行われ、多くの場合は申請当日または翌日には審査結果が届きます。稀に審査の通知に時間を要するケースもあるため、渡航3日前までにETAS(イータス)申請を済ませておきましょう。
ETAS(イータス)に関する詳しい情報と申請方法は「オーストラリア観光ビザのETAS(イータス)とは」をご確認ください。

更新日 : 2021/09/28